2010年4月15日木曜日

データセンターエネルギー効率指標のPUEを改善する

デファクト標準になっているPUEには問題がないわけではありませんが、データセンターでのエネルギー効率を評価する指標としてかなり浸透してきています。グリーンIT推進協議会はPUEを改善する独自の指標を今年の2月に発表しました。Data Center Performance Per Energy (DPPE)と名つけられています。エネルギー毎のデータセンター性能とでも訳しますか。ホワイトペーパーを発表したり、他の機関に働きかけて世界標準へと考えているようです。

その定義はじゃっかん複雑でまず以下を定義します。
  • データセンタのIT機器利用率 (ITEU)
  • IT 機器のエネルギー効率 (ITEE)
  • PUE
  • グリーン電力利用率 (GEC)
そして、概念的には:

DPPE = (IT機器稼働率×IT機器の総能力)/(DC総消費エネルギー-グリーンエネルギー)

= (IT機器の実利用量)/(商用電力利用量)

もっときちんとすると

DPPE = ITEU * ITEE * 1/PUE * 1/ (1-GEC)

= (IT機器利用率 * IT機器の総能力) / (DC総消費エネルギー-グリーンエネルギー)

つまり、クリーンでない実際の電力に対する実際のITの出力に対する比率となります。

では他にもPUEを改善するして提案されている指標をみてみましょう。その2つはDCePとCADEです。

DCePはグリーングリッドで検討されています。その定義は簡単で全電力に対するデータセンターの有力な出力で、(有益な出力)/ (全電力消費)と書けます。DPPEとの違いは

  • 電力の出所(クリーンかどうか)を考慮しない
  • DCePは有益な出力ののみを考慮
クリーンなエネルギー源を考慮するのは良いとは思いますが、現実的にはほとんどまだクリーンなエネルギーを使用するところまで行っていません。最近のAFCOMのミーティングでは燃料電池をそれに使えないかという議論がありました。更に、もし全てのエネルギーがクリーンエネルギーで賄われるとこの指標は無限大となってしまい。それは適切ではないと思います。第二点ではDCePは有益なと出力を規定しています。極端な場合全く無意味なソフトを走らせてIT機器の効率を上げたりもできますから。しかし、有益な出力を実際に計測することは困難なので現在8つのプロクシーが提案されています。DPPEもプロクシーとして定義しているのでしょう。

CADEはMcKinseyとUptimeが共同で提案しており、定義は以下です。

CADE = ファシリティの効率 (FE) * アセットの効率 (AE)

  • FE = ファシリティのエネルギー効率 * ファシリティの稼働率
  • AE = IT のエネルギー効率 * IT の稼働率
です。

これもDPPEになんとなく感覚的に近いですが、全く同じではありません。

どの指標を取っても完全ということはなくて、長所もあれば短所もあります。DPPEを世界標準としてプロモートするなら、グリーングリッドのような団体と協議を重ねる必要があるでしょう。色々な考え方があり1つの指標だけが正しくデータセンターでのエネルギー効率を評価できるとは限りません。

私見ながら、現在まで日本は米国のスタンダードをやみくもに受け入れてきたので、ここらあたりで独自の見解を日本の外へ提示して議論を始めるのはとても良いことです。現実は英語により発表・議論できないと日本語ではその威力は小さいと言わなければなりません。

原文ここ

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