The Green and Virtual Data Center, by Greg Schulz, CRC Press, 2009, ISBN 978-1-4200-8666-9 (英語のみ)
初めに
簡単に言うと
この本は、環境を考慮することと仮想化という2つの大きなコンセプトに基づく次世代データセンターに関するものです。
対象となる読者
広く多種な読者を対象にしています。つまり:
IT リソースの購買、ファシリティ、サーバー・ストレッジ・ネットワーク・データベース・アプリケーションのアナリスト、アドミンやアーキテクトなどです。更には、製造やソルーションプロバイダー、営業、マーケテイング、エンジニアリング、更にはITの技術やサービスに関連するプロモーションや投資家やメディアを含みます。
視点
データセンターはITとファシリティの機器や装置から成り立っています。ファシリティに関してもエネルギー効率を上昇させるための十分な議論がなされています。しかし、この本はあくまでITからの視点で書かれています。
構成
この本は4つのパートから成り立っており、それぞれのパートはまた幾つかの章から成り立っています。目次と第一章はここから無料でダウンロードできます。
構成のまとめは:
- ITデンターセンターのエコおよび他の問題。グリーンITとデータセンターでの問題とのギャップや米国での発電や配電についての解説も含む。
- 仮想技術次世代データセンターの定義と仕様とそれを構成するコンポーネントと測定と指標
- 仮想化されてエコなデータセンターを実現する技術や手法。ファシリティの手法やサーバー、ストレッジやネットワーク機器の詳細を含む。
- いかにに全てをまとめるか。
リビュー
幾つかのキーワードが本の中で度々繰り返されています。それは、PCFE (電力、冷却、フローアー・スペースと環境問題), EHS (環境、健康と安全問題), IRM (インフラ・リソースの管理問題)と仮想化です。これは偶然そうなった分けではなくこれらのキーワードで筆者は自分のメッセージを伝えているからです。
大抵のデータセンターの運用者はPCFE の問題に直面しています。電力、冷却とスペースが不足していることは誰でも知っています。でも殆どの運営者はPCFEの問題とグリーンITとグリーン・データセンターとの関係を知りません。パート1では筆者はこの問題を指摘し、そのギャップを埋めITの視点からエコとは何かについて議論しています。更に本当は同レベルくらい重要だが大抵は無視されている EHSについても述べています。
次のキーワードであるIRMは大切なコンセプトです。データセンターには異なった種類の要素が多量にあるからです。効率の良いIRM は仮想化と共に重要です。IRMはデータセンターの全ての要素を他の要素と切れ目なく動作させることで、エネルギー効率の上昇を図り、エネルギーコストと温室ガスを削減できます。筆者はIRMの必然性を的確に述べています。
仮想化は一番重要なキーワードです。仮想化すれば、様々な異種類の実際に存在する物理的リソースを1つの論理的なリソースに抽象化できるからです。抽象化されたリソースを必要に応じて使用でき、エネルギー効率を高めることができます。現在までの仮想化はサーバーのみに集中して書かれてきました。現在のM&Aの傾向が示すように実際の競争は仮想化データセンターで起こっています。そして仮想化データセンターの先にあるのはcloud computingです。著者はストレッジの分野の専門家でデータの重要性を強調しており、ストレッジの仮想化や技術に関しても詳細に述べています。これは現在の市場傾向に適していますが、今データとストレッジ技術に焦点があたり始めているからです。最終的な方向はcloud computingでそれには仮想化されたデータセンターです。この本はそれについて詳細に述べています。
改善の余地
この本が対象にしている読者の層はあまりにも広いので、部分によっては技術的過ぎるかも知れません。技術的な背景によっては読者に応じてある章に焦点をあてて他の章は飛ばすことも必要でしょう。どのレベルの読者がどの章を読むべきかのガイドラインがあれば良いと思います。この本は大学での授業のテキストとして解説されると非常に効果的だと思います。
多くのトピックがカバーされています。私は多くのIT技術や手法には熟知していますが、読み終わるのにしばらく時間が掛かりました。他方、非常に技術的な方には、基本的な情報は煩わしいかも知れません。これの対応としては、3つの技術レベル(初級、中級、上級)に分けて3つの版の本を作るのが良いと思います。
新しい版での新たな題目:
本は書かれた時期の情報しか含めない。短い版のほかに新しい分野も含んで欲しいです:
- データセンターの様々な要素を整理するフレームワーク
- 再生可能エネルギーや温室ガス排出などのエネルギー問題
- 色々なレベルでのITとファシリティとの関係
- IT とテレコムのデータセンター
- 更なる cloud computingの議論
結論
全体的にこの本は良く構成されていて、次世代のデータセンターを理解するための必要な技術や手法が詳細に記載されています。ある部分はITの技術背景がないと理解が苦しいかもしれません。しかし、この本を読めば現在のデータセンターが直面している問題と解法を理解でき、次世代のデータセンターに取って環境を保全するために何が必要とされるかが分かります。
多くの項目に付いて書かれているので、幾つかの短い版があればなお良いと思います。更に、新たな再起注目を浴びている分野についてもカバーして頂きたいです。
購入
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原文ここ。
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